数をこなすにつれてたくさんの友達もできた。1000戦以上こなすベテランの「髑髏狼」さんからは狼のときについてもっと深いことまでおしえてもらった。彼は狼サイド側がとっても上手で、まわりにうまく溶け込みながら発言をすることができ、村の目線からもしっかりとものを考えられる上級プレイヤーだ。私もああいったプレーヤーになりたいとずっと密かに思いながら練習してきた。
 一応部活はバトン部に入っていたが、結局夏休みわざわざ学校に出るのが面倒くさくてそれ以降いってなかったし、出たところでほとんど体育館は卓球部やバレー部にとられて借りれず(うちの中学は卓球とバレーが県大会によく出場するれべるでつよかった)、端っこのステージの上とかで柔軟体操ばっかりでつまんなかったのでまあ別に問題なかった。
 それにしても……。安城は思索にふけった。人狼ゲームというのはやはりゲームにしてはよくできすぎている。表ではただ会話をしているに過ぎないのに、裏側では相手がどんな役にいるのかを探るために、探るようなブラフをかけたりする。そしてそのブラフは奥に潜れば潜るほど解けぬものとなっているんだ。
 これはもしかしたら心理的なスポーツか何かなのかもしれない・・・と安城ぴんくは思った。わたしはまだ努力できるし、少なからずその才能がある。そう考えると、ますますやる気に満ちあふれていった。
 
「あんた最近いつまでやってんの?」
 カーテンの隙間からちょうど太陽のあかりが漏れている時間にドアがあいた。たぶんもう日の出の6時くらいなんだろう。
「さっき起きたばっかなの、最近夜の寝付きがわるくて」
 大体こういいとおせば大丈夫だった。親の部屋とは結構離れているので、何をしていても問題ない。顔には隈があるのでなるべく顔を面と合わせないように喋る。すると母は言った。
「・・・・嘘ね。ちょっとこっちきなさい」
 正直いって眠かった。人狼をしているときは頭がはたらくが何もしてなかったら横になって5分ほどでぐっすり寝れるだろう。
「・・・・えー、もう学校だから準備するよ。お母さんは朝ごはんの準備でもしててよ」
「早くきなさい!」
 そういって母は無理矢理私の肩を掴んでから、その手を顔のほうにもっていき面と向かわせた。
「・・・・いつから徹夜してたの?」
「・・・・二週間くらいまえから」
 長い沈黙の間があったと思う。普段だったら目を逸らすけどそのときは逸らさなかった。そんな余裕なんてなかった。一応肩は支えてもらっていたけど、それがなかったらきっとふらふらしているくらいには朦朧で眠っていたとおもう。
「今日は休みなさい……。学校には言っておくから」
 母は辛辣そうな声で私にそういった。それから無言のまま部屋の電気を消して去っていった。それはとても意外だった。実際もっと怒ると思っていたから。小学生の時のように、どうしても勉強が苦手なだけなのに、先生の話をしっかりきいていないだとか、勉強時間が足りないだとか、何かしら別の理由をこじつけて叱りつけると思っていた。
 だからそれはとても意外だった母のいち面でもあったのだ。



 
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「分かってるけど・・・」
 けどどうしても抑えられない。1試合終えると、まるでライブの後のような熱の冷めやらぬ興奮状態がしばらく続いた後、その熱を再び求めようと体が本能的に走り出してしまう。
「けどじゃないよ! 体に悪いし、来年は受験だってあるんだよ!」
 ユウちゃんは時々母親みたいなことをいう。正直そういうときはうざい。しかも今は猛烈に眠いから更に鬱陶しく感じてどんどんいらいらしてくる。
「知ってるよ・・・程々にしとくから」
 といって安城は机に突っ伏して軽く目を瞑った。ああ早く学校おわってくれないかな。それよりも、ちゃんと帰れるかな・・・――いやちゃんと帰って人狼しなきゃいけないんだ。
 結局のところ、安城はおさまることをしらなかった。もう2週間の間には200試合を戦い抜き、もう一人で村全体を引っ張っていけるまでの上級プレーヤーにまでなった。しかしあまり村を引っ張りすぎると狼目であると思われるため、村の場合はそういう風な目線を思わせないことが大切だということも学んだ。




安城の過去

 安城には中学の頃から仲の良い友達がいた。彼女の名前はユウちゃんだ。元々内向的な性質だった安城は、学校でもほとんど喋ることなく、授業でも先生が誰かをあてそうになるとき毎度びくびくするほど怖がりだった。目立つのが嫌いなのだ。けれどユウちゃんと塾で知り合ってからだんだんと打ち解けていき、いつしか学校外でも彼女と遊ぶようになっていた。
「ねえ・・・・・・人狼ゲームって知ってる?」
「なあにそれ」
「狼と村人で戦って、うまく狼を追い出すゲームだよ」
 そういわれてもいまいちピンとこない。
「具体的にはなにをするの?」と安城は訊ねる。
「喋って狼を見つけるの。占い師とか色々いてね、その能力もちの人たちと協力して追い出すんだよ。けど夜には狼が一人誰かを食べれるの」
 たぶんユウちゃんも実際にやったことないのか、説明が曖昧な部分があった。私は家に帰ってからネットで調べてみた。けれどルールが長く、覚えることが複雑でそのときはすぐにブラウザを閉じてしまった。

 それから数ヶ月が経った。ちょっと強い秋風が最近は吹いていて、地面にはだいぶ濁った茶色の葉が散乱していた。
「これやってみない?」
 そこには、Yahoo人狼オンラインサービスついに開始! と書かれていた。
「なにこれ」
「人狼ゲームだよ」
 ああ。前も言ってたな。けどすぐにやめた気がする。
「かんたん?」
「これなら説明もあるし結構わかりやすいとおもう。とりあえずやってみない? やってみたら面白いっていうし」
「わかった」
 そこから安城の人狼ライフは始まった。最初はチャットも寡黙気味でよくわからないうちに仲間から殺されたりもしたが、流れを覚えていくうちに段々人狼ゲームにハマっていった。気付けば一日のうちのほとんどを人狼ゲームに費やすようになっていた。
 もちろん弊害はでた。休日は外に出ることはなくなったし(といっても田舎なので外にでてもやることがないというのもあった)、日曜日は夜遅くまでやっていたので月曜には学校によく遅刻するようになった。
「最近だいじょうぶ?」
 ユウちゃんが心配そうな声がそばからきこえた。けれど眠いせいでどこから聞こえたのかも曖昧だった。少しでも気を緩めれば睡魔に一気に持って行かれそうだった。
「ちょっとねえ」
「もしかして人狼やってるの?」
「うん・・・・・まあね」
 ユウちゃんもぼちぼちやっているそうだが、彼女の親は厳しく週6で塾があるのであまり遊べる時間が少ないらしい。
「え、300? もうこんな試合数やってるの?」
 とユウちゃんは目を点にしたじょうたいで携帯を見つめていた。どうやら私のプロフィールデータを見ていたらしい。
「まあ・・・なんていうか、はまっちゃってさ」
「それでもやりすぎだよ。ちょっとは抑えとかないと体こわしちゃうよ」





Online

「オンライン対戦?」
りくは眉をひそめながら繰り返した。言葉の意味はもちろん知らないわけはない。だがあまりにも話しの流れからして唐突すぎて驚きを隠さずにはいられなかった。
「どういうこと?」
「文字通りオンラインでやる人狼ですよ」彼女は不敵な笑みに近い、何とも見ているこちら側に色々と想像させるような笑みを浮かべた。「実は私るる鯖出身なんです」
 るるさば? それから彼女はとどまることなく語り始めた。俺は一応始終聞いていたが、聞いたことない単語に戸惑いしか覚えないし、何を言っているのか分からない。特定の趣味に偏執的に情熱を注いでいる奴というのは、大抵、人にその物事のよさを語るときについ熱が入りすぎて周りが見えなくなっちまうのか。相模原にいたシマモもこんな感じで暴走機関車だった。急にそんなのを言われても、まだ俺は人狼のじの字すらも分からぬ初心者なんだから・・・・・・もう少しわかりやすく説明してほしい。
 とりあえず俺は商品の精算を行って、指で壁際を指差して彼女にあちらにいけとさししめした。「あっちいけ、どうしても話したいならバイトおわったあとできいてやる」
「いつおわるんです?」
「19時だな。夜の19時」
あと4時間もある。待てるはずがない。こういう輩は我慢することが大嫌いだ。今まで付き合ってきた中でこういう暴走機関車タイプは10人中8人は待つことが出来ない。りくは笑うのをなんとか堪えながら、にやりとほくそえむだけにとどめた。彼女はそれを見て、空港で犬を引き連れながら取り締まる麻薬取締官のように、目を細め、唇を尖らせた。それから少したった後に落ち着いた声で言った。
「わかりました。待ちます」
「は?」とすぐさまりくは聞き返したが、彼女はその言葉に耳も貸すことなく、奥の事務所室の方にあった近くのパイプ椅子を勝手に持ち出して座り、スマホをいじりはじめた。
「おい今何時か分かってんのか」
「2時とちょっとですよね? あ、もちろん14のほうの」
「っち、店長きたらどうすんだよ」
「私は客ですからどうもしませんよ。このまま花をずっと見つづけてるだけです。ウィンドウショッピングです。お気になさらず」
 はあ。りくは聞こえるようにいかにも重そうな息を吐いた。どうしてこういう強情な奴がおれの周りには多いのだろう? りくは顔を覆うように手をあて軽く目をつむった。昨日も似たようなことがあった。最近はこういった事がたて続けに起きている。だから今度神社に行って、災厄が訪れないお守りでも買おう、と心に決めた。
 店長はタバコにいっていなかった。店長はよく昼の客の少ない時間帯にタバコに行く。店長がその言葉を発すると、ニ時間近くは帰ってこない。どうせパチンコでもいっているのだろう。俺を含め他の従業員はもちろんそのことをしっているから、もう暗黙の了解みたいになっている。その代わりその間は俺たちも自由に何をしても許される。といっても飯屋ではないからつまみぐいなんてできるわけもないが。できるのはせいぜい椅子に座ってスマホをいじるくらいだ。
 だがそれも今じゃ一応客である彼女の前ではなかなかしにくい。俺は彼女のことをほとんど知らないから敵か味方かも分からない。恐らく俺が反抗的な態度をとれば彼女は俺の非行を店長にすぐさまいいつけるだろう。
「なあ、名前なんていうんだっけ?」とりくはいつもにはない高めの声で聞いてみた。
「安城です。安心できるお城で安城です」
 よく分からない例えだ。お城の時点で安心なんてできるわけがない。少しの間のあとに彼女がいった。
「何かあるなら言ってくださいよ」
「・・・・別に何とも思ってないからな」
「じゃあ名前教えて下さいよ。私教えたんですから」
「俺はあれだ・・・相上(あいがみ)だ。相上りくだ」
 俺はいつもの知らない奴用に出す仮の名前を言った。初めて会うようなやつにはだいたいこの名前を使うのが俺の中でのセオリーだった。どうせすぐ会わなくなって忘れられるのだから名前なんてあってもなくても変わらないのだ。
「じゃあ相上さん。一つだけきいてもいいですか」と彼女はこちらに向き直っていった。
「なんだ」
「人を騙すことに罪悪感、ありますか?」
 なぜ急にそんなことをきくのか。
「どうしたんだいきなり」
「答えてください」
「まあ人並みにはあるさ」
「そうですか・・・・・・。いえ、人狼ゲームには罪悪感がある人はあまり向いてないんですよ。昔、誘った人で公私混同した人がいて虚言癖になってしまったんです」
 安城は急に声のトーンが一段落ちて、黒のピーコートに覆われた小さな肩をきゅっとすくめていた。

奴隷とマンションと伝説の王子様 4

結論からいうと人狼ゲームは特にこれといって盛り上がらなかったルールが曖昧かつ一度吊られてしまったらおわるまでゲームに参加できなくなるし、そもそも何を考えればいいか初心者にはよくわからないといったところが盛り上がらなかった要因だった。そのため盛り上がっていたのは勇気を出して声を張った彼女だけで、他の人には王様ゲームや真実か挑戦というような遊びの方がやはりスリルもあるためか面白そうに見えた。
「そろそろ時間も時間だしお開きにしよっか」
 数時間の合コンも夜10時になりしめくくられそうだった。みんなだいぶ酒もまわっており、顔は赤く染まり上気して一部は千鳥足にまでなるほどで周りに介抱させられていた。
 今回の合コンで木場と林田はあまり良い収穫がなかったようだ。大体彼ら二人が大抵相手の中でも上玉といわれる女をお持ち帰りするのだが、あまりときめく相手がいなかったのか終わりの方にはあまり喜ばしくないような渋い表情を浮かべていた。
「微妙だったな……今回」と林田は携帯を見るような素振りで下を向き、りくと木場に聞こえるくらいの小さめの声でつぶやいた。
「まあまあそんなのしゃあねえだろ。何回も良いものがくるわけじゃない」と木場が答えた。木場はトイレに行くといってたちあがると多少フラフラ気味になっていたが、何だかだいぶ心地よさそうに見えた。
「りくはどうだった? 今日の」
「ふぅー、まああんま興味ないからなあ。たまにやるのは悪くねえんじゃねえか」
「女とつきあったことある?」
「・・・・一回だけね」
「やることはやったのか?」
 そんなことまで答えなくない。りくは目をそらして向かいにあるモニュメントらしきものを眺めた。それは大きな木の幹のようなもので、ニスがべったりと塗られところどころには自然に開けられた風に見せた穴が彫られていた。見ているだけで何ともぼんやりと曇り空の中に身をおいているような心に空漠めいたものを感じた。明日になれば今日のこの飲み会は何だか微妙に感じになるだろうなぁと心に思った。
「まあ何にしろ、今しか楽しめねえぜ。理系なんて今頃部屋で研究してるんだからな。俺らだけの特権だぜ」
たしかにそうかもしれない。今しか休みはない。けれども今はそんなことどうでもよかった。女のことだとか単位のことだとか、全てがどうでもいい。もっと大事なのは今をどう生きるかだ。そのためには楽しみを何か見つけなければいけない。人狼ゲームは中々面白そうな感じはしたが俺にはきっと合わない。りくは駄菓子屋に打っているシガレットをまるでタバコを咥えるような素振りでゆっくりと噛みながら夜道を歩いていった。

 今日はフラワーショップでバイトの日だった。フラワーショップと表現するのは店長が以前に、りくが花屋と言った際にその表現はあまりよろしくないからやめなさいと指摘されたからだった。だからりくはフラワーショップと敢えて表現している。因みにアクセントは、ワの部分だ。ワ(Wer)の部分を下を巻くように言うのがコツだ。最近は短期のバイトが繰り返し続いているが1ヶ月前に店長から、ここでしばらくやってみないかいと声をかけられて続けているのだった。別に雰囲気も悪くないし、繁忙期でないかぎり客は一定の層しかこないので大抵はほとんど暇で自由な環境だった。
 昼くらいからちょっとだけ客が増えてそれらを捌き終え、ちょうど飯時で休憩に入ろうとしたときだった。
「あ、あの・・・・・合コンの時の人ですよね?」
 突然の言葉に彼女の顔を見る。たしかにそれは見覚えがあった。けれどあまり思い出せない。・・・・・数十秒時間考えていると、彼女の方から「合コンにいたじゃないですか」と言われ判明した。そうだ、あの合コンのときの子だ。・・・・・たしか合コンで何か叫んでいた子だ。もうあんまりおぼえていないけど。
「どうです? あれから人狼ゲームやってみました?」
「…いや、やってない」
「なんでですか!」彼女は離婚届を突き出す女みたいな剣幕で身を乗り出してこちらに詰め寄ってきた。
「いや、やる意味がねえだろ。正直あんまおもしろくなかったし」
「そ・・・そんな・・・・」
 その演技めいた口調は何なんだ。周囲から視線を浴びるからやめてくれ。店長に見られたらどんな風に今後からかわれるかたまったもんじゃない。「なあ」と声をかけると彼女はすぐに人がかわったかのように携帯を前に突き出してきた。
「じゃあオンライン対戦しましょう!」



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